お久しぶりです!更新が滞ってしましました…。
今回はフォントの話です。最近の環境では、はじめからある程度美しい書体がデフォルトでそろっているので一般的な使い方をしていれば特に不都合はないはずです。
しかし、プロユースとなると大量のフォントを所有し、様々な場面で一番最適な書体をセレクトすることが必要となります。
書体には歴史や文脈がありそれを理解することで、本来の書体の持つ力を最大限に発揮できるのです。
ちなみに弊社では約10,000書体くらい所有しています。これはクリエイティブ会社の中でもそこそこ多い方だと思います。
書体やタイポグラフィ、フォントの歴史について触れようとすると、なかなか大変なのでここでは割愛しますが、フォントの歴史は印刷の歴史とともに進化しています。
簡単に言ってしまうと、木版活字→金属活字→写植機→DTPといった変化の中で書体は活躍してきました。
若い人はパソコンの中だけのフォントしか知らない人が多いと思いますが、40代中盤以降くらいの人、もしくは漫画に携わっている人なら写植を実際に使ってきていると思いますが、私の経験でいうとデジタル移行がほぼ終わった時代からの経験値なので実際にはDTPでしか書体の経験はありません…。
しかし、書体というカテゴリは非常に興味のある分野なので独学や諸先輩方のお話を色々聞いて勉強はしてきました。
有名なフォントベンダーは和文書体で言えばモリサワ、フォントワークスの2トップが有名です。欧文書体でいうとモノタイプ、エミグレ、ライノタイプなどでしょうか。多言語ではアドビですね。最近ではGoogleがものすごい勢いあります。そしてフリーフォントもネット上でゴロゴロ転がっています。
今でこそ書体は身近なものに変わりつつありますが、ちょっと前までは書体ってものすごく高価なものだったのです(特に和文書体)。1書体数万円!さらにプリンタにフォントをインストールするためのプリンタフォントを購入する必要もありました。それも高かったのです。
時代の流れでしょうか、最近のフォントベンダーはサブスクリプションで随分と導入しやすくなりました。またクリエイティブ業界必須のアプリ、AdobeCCを導入すれば、基本の有名書体が欧文も和文も使えてしまいます。
ただ、冒頭でも書きましたが、やはり書体の選択肢は広く、それを選定する目を養うことが優れたクリエイティブにつながると私は思います。
ちなみに基本書体とは何?やフォントの数が多すぎて何を使えばという若手デザイナーさんに向けて常に入れておいて間違いない書体を軽く以下で紹介します。
※あくまでも基本的な書体を独断で紹介しています。
- モリサワ
中ゴシックBBB
言わずとしれた主に本文用のゴシック体です。
太ゴB101
抑揚のあるやや太めのゴシック体です。
見出ゴMB31
字面の小さな見出し用ゴシック体です。
ゴシックMB101
特に太いウェイトが有名。骨太なゴシック体。
新ゴ
モダンなゴシック体。装飾のない均質さが特徴。
リュウミン
本文組みから見出しまで何でも来いの明朝体。
太ミンA101
漢字・かな共に大きめの設計のやや太めの明朝体。
見出ミンMA31
どっしりとした風格のある太明朝体。漢字が太めでかなはやや細め。
- フォントワークス
マティス
ベーシックでシャープな明朝体。
ロダン
モダンだけどまろやかな印象を持つゴシック体。
セザンヌ
起筆部にアクセントを持ったゴシック体です。
スーラ
丸ゴシックといえばスーラというぐらい有名な書体。
筑紫シリーズ(明朝、ゴシック、丸ゴシックなど)
狭いふところのデザインのクラシカルな書体。
- 欧文書体
Century(センチュリー)
センチュリーマガジンという雑誌用につくられた書体。日本では英語教科書などに。
Georgia(ジョージア)
オールドスタイル数字を備えた本文によく合うセリフ体。アトランタオリンピックの公式ロゴにも。
Times(タイムズ)
イギリス、タイムズ紙が新聞用書体として開発したセリフ体。フォントベンダーによって少しづつ形状・名称が異なります。
Garamond(ギャラモン)
オールド・フェイス・セリフの代表格。有名IT企業がコーポレートフォントとして使用していた。様々なバリエーションのGaramondが存在する。
Didot(ディド)
モダン・フェイス・セリフで人気の書体。ラグジュアリー系の有名ファッション誌やブランドで使用されています。
Bodoni(ボドニ)
こちらもモダン・フェイス・セリフで代表的な書体。Didotよりも縦横のコントラストやアクセントが控えめ。
Lucida(ルシーダ)
本文で見やすいためにデザインされたフォント。小文字の背が高く大文字は背が低い。セリフ・サンセリフ・スクリプトなど色々なタイプがある。
TRAJAN(トレイジャン)
2,000年前にローマに建てられた「トラヤヌス帝の碑文」と呼ばれる石碑が元になった書体。小文字がないスモールキャップスです。
Rockwell(ロックウェル)
スラブとは石板の意で、スラブセリフの代表格的書体。PLAY BOYの書体で有名です。
Helvetica(ヘルベチカ)
言わずとしれたサンセリフ書体の代表格。NeueやNowなど改訂版も存在する。
Arial(エイリアル、アリアルなど)
Windowsユーザーにはおなじみのサンセリフ書体。読み方はアライアル、アリエル、エアリアルは発音的に間違いらしい。
Futura(フーツラ)
モダンなサンセリフの代表。一見すると可愛らしいが、組み方によって幅広く使用できる。ヴィトンやフォルクスワーゲンで有名。
Gill Sans(ギル・サン)
読みやすさを考えてデザインされたサンセリフ欧文書体。モダンかつ温かみのある書体。
Optima(オプティマ)
分類が難しいがサンセリフ書体。エレガントさとシンプルさを兼ね備えた独特の美しいフォルム。
Verdana(ヴァーダナ)
マイクロソフトがコンピュータ用ディスプレイ上で視認性向上の為に開発したサンセリフ体。
Frutiger(フルティガー)
遠くから見たときの視認性に優れ、空港や駅などの案内用標識などによく使われるサンセリフ書体。
Univers(ユニバース)
ベーシックなサンセリフ書体。ヘルベチカは広告の見出し用、ユニバースは本文用として設計された書体です。
Eurostile(ユーロスタイル)
角が丸い角張った形のメカニカルな雰囲気を持つサンセリフ書体。
Myriad Pro(ミリアド)
Frutigerに倣って制作されたAdobe社のフォント。アドビ社を始め多くの企業のコーポレートフォントに採用されている。 以前はアップルの製品ロゴの書体だった。
Impact(インパクト)
こちらもWindowsユーザーには馴染みの深いサンセリフ書体。太いストローク、圧縮された文字のスペースは、どっしりした雰囲気から力強い印象をあたえます。
Franklin Gothic(フランクリンゴシック)
ベーシックですが少しクラシカルな雰囲気を持つサンセリフ書体。スタバや二ューヨーク近代美術館のロゴ書体で有名。
Avant Garde Gothic(アヴァン・ギャルド・ゴシック)
雑誌「Avant Garde」のロゴのためにデザインした幾何学的サンセリフ体。AKB48・adidasのロゴで有名。
Century Gothic(センチュリーゴシック)
幾何学的なデザインが特徴のサンセリフ書体。Futuraに影響を受けて作られた書体。Windowsには標準で入っている。
Gotham(ゴッサム)
元々はメンズファッション誌「GQ」に依頼され2000年に制作されたサンセリフ書体。比較的新しいフォントだが、デザイナーからは非常に人気のある書体。
Avenir(アヴェニール)
UniversやFrutigerのデザイナーが制作したジオメトリック・サンセリフ書体。無機質だがどこか温かみを感じさせるフォント。
本当はもっと定番はあるはずですが、書いていくときりがないのでこのへんでやめておきます。
新人デザイナーさんは上記に上げたフォントをベースに、自分の好きな書体をプラスしていくのが良いと思います。ただ、私も新人のときによく言われたのは、まずは基礎ができてからじゃないと、選ぶという行為はあまりおすすめしません。まずは定番の書体を使いこなしてから、次のステップに進みましょう。書体をやみくもに増やしすぎ、これはかっこいい・かわいいなどと思っていた書体が実はそうでもないなと成長すると気づくはずです。